一度目、キス【短編】
その日からやって来なくなった。だから二月後くらいに自ら出向いた。息を呑んだ。
彼は憔悴しきっていた。
『………何で、来るんだ』
『………会いたかったから?』
正確に言えば疑問系ではなかったのだが、あえてした。ふっ、と月島は力なく笑う。
『………びっくりした?』
『とっても』
だけど、とつなげた。
『私、こうなることが分かっていたかもしれない。』
気付いていた。
彼が―――月島が弱っていたことくらい。
なのに、放っておいた。
あのキスに動揺して。
『何があったの?』
彼は何も言わなかった。驚いた顔をしていたけれど、何にもないよと無理して笑っていた。
―――その次の日、彼の部屋は蝉の脱け殻と化していた。