一度目、キス【短編】
***


 あの日、何で私にキスをしたのだろうか。

 私は既に好意を持っていた。だから抵抗が弱かった。

 何故、あの時無理矢理にでも聞いとかなかったんだろうか。


 今でも、思い出す度に激情が身体に渦巻く。



 彼は最後にはぐらかしていた時、小さい声でぼそりと言ったのだ。「決着をつけなきゃな」って。


 あれはなんだったんだろう。


 インターホンが鳴った。玄関までパタパタ走る。扉を開く。


 スーツを着た青年があの時と同じように笑った。


 その時、涙が溢れていきなり抱きついた。無意識だった。大声をあげて泣いてしまって、子供のようだと思った。青年は困ったように私の頭を撫で、キスをした。


 月島律との二回目のキスは優しかった。


Fin
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