片思いの続きは甘いささやき
神前式の結婚式に出席させてもらえたのは、このアマザンホテルに同期として入社した5人。
本来なら親戚だけが出席するような厳粛な時。
真田くんがどうしてもと言ってくれて、この10年ともに働いてきた同期で門出を祝った。
みんな、気をつかってたな…。
雪美は苦笑しながら神殿を後にした。
早速たくさんのカメラに向かって笑う新郎新婦。
白無垢が良く似合う透子さんは、照れながらも笑顔は絶えなくて…。
羨ましい。
大好きな人と将来を一緒に過ごせるなんて、本当羨ましい。
…真田くんが相手だからではなくて…愛する人から愛されるのって、極上の幸せ。
しばらくその様子をじっと見ていた雪美は、はっと気づいたように近くのエレベーターに向かった。
まずいまずい。
真田くんの披露宴の最終の打ち合わせが残ってるんだった。
ぼんやりとしていた心を引き締めながら、ちょうど開いたエレベーターに飛び乗った。
はぁ…。
大きく息をついて、エレベーターの壁に手をついた途端、閉じかけた扉に差し込まれた手。
「ひゃっ…何…?」
ガタンと大きな音がして
再び開いたドアの向こうから、飛び込んできたのは。
「あ…喬…」
「間に合ったな。
俺に挨拶もなしに逃げるのか?…ん?」
余裕しか感じないこの男…いつも強気な言葉ばかり。
ほんのり赤くなったはずの自分の顔を気にしながらも、雪美の視線は喬から離れなかった。