片思いの続きは甘いささやき

「雪の中に居座ってる俺以外を想う感情と折り合いをつけてくれるまで、待つ覚悟だったからな。本当、誉めて欲しいよ」

そっと雪美の髪をかきあげながら呟くと、軽く唇を合わせた。
そのまま額と額をくっつけて、喬はぐっと睨むように。

「やっとだ。やっと俺のもんになった。もう、よそ見なんてさせない」

うなるような低い声に、雪美は目を見開いて驚くばかり。どう受け止めていいのか、答えていいのかまったくわからない。

「喬・・・どうしたの?・・・ずっと変だよ・・・」

心細い気持ちを隠せず、小さくなる声で、雪美は囁く。

「今までがずっと変だったんだよ。俺は雪の心がまるまる全部欲しくて欲しくて気が狂いそうだった。・・・いや、狂ってたのかもな」

「喬・・・?」

「なあ、仕事辞めろよ。毎日俺のためだけに生きて俺のためだけに笑えよ。他の男なんか見るな。俺以外に興味持つのもやめてくれ」

「・・・どうした・・・の?」

あまりの強い言葉と視線に、雪美は体の芯から震えてくる。
ここまで想いをぶつけてくる喬をまのあたりにして、初めて喬の本当の姿を見せられたような気がする。
いつも曖昧に笑いながら、本音をどこかに置き忘れたように接してきたのは。
今目の前で・・・まさしく苦しそうな表情を隠そうともせずに真意をぶつけてくる喬と同一人物なのに。

「俺のためだけに、残りの人生を過ごせよ」

重ねる言葉はまるで初めて会う人からの言葉のようだけれど、雪美の体に回された腕の温かさも指先から伝わる愛情も、慣れ親しんだ喬のものに違いない。
戸惑う気持ちを抑えることはできないけれど、それでも、落とされる言葉を喬からのものだと簡単に受け入れる自分を感じていた。
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