片思いの続きは甘いささやき
翌朝。
カーテン越しに漂う朝の光をぼんやりと見ながら、腕の中に小さく寄り添う雪美をさらに抱き寄せて。
喬は震えるほどの幸せを感じていた。
何度も何度も抱いた。
夕べだけじゃなく、出会ってからずっと雪美に自分の存在を刻み込むように抱き続けていた。拒まない雪美の心が、全てまっすぐに自分に向かうように祈りながら抱いていた。
濠への叶わぬ思いは雪美を縛り付けていて、どれだけ時間を費やせばまっさらな気持ちを喬だけに向けてくれるのかを狂いそうな感情で耐えていた。
眠る雪美の鎖骨から胸に広がる赤い花は幾つもちりばめられていて、自分の感情の抑えが効かなかった夕べを思い出す。
きっと制服で隠すのは無理だろう。
雪美の怒る顔を想像して心が温かくなってくる。
怒った顔でさえ、雪美が自分にだけ向けるものだとすれば、喜んで受け止める。
少し腫れ上がった唇をゆっくりと指でなぞると、瞬間吐かれる小さな声に、起こしてしまったかと息を止めても、抱かれ続けたその体が覚醒することはなくほっとする。
今は閉じられている雪美の瞳は、昨日ようやく喬だけのものになった。
柚が待つ部屋に入ってきた心細そうな雪美を見た時、すぐに抱き寄せたかった。
あいにくドアの一番近くにいた濠が雪美を部屋に迎え入れた流れは自然だったとはいえ、喬には複雑なものだった。
扉が開いて、濠への驚きの声を上げたあと、ようやく部屋の中の様子を知るや否や、
『どうなってるの?』
とまっすぐに喬へと問う瞳。
すぐ横に立っている濠ではなく、不安げな気持ちを喬に向けてきたその雪美の様子が、喬には大きな合図だった。