岩内さん、フォーカス!
初仕事
小日向望は制服の襟元を整えた。



「…むぅ」



イマイチ、男らしくならない…。



「望ちゃ~ん。無駄な抵抗は終わったかい?」

「無駄な抵抗じゃありません。男の身だしなみです。工藤先輩こそ、準備は終わったんですか?」



本当は判っていた。これは無駄な抵抗だ。

制服の襟元を整えても、自分の女性的な顔も、色素の薄い髪の毛も、低い背丈も変わらない。



工藤と呼ばれた少年は大きく頷いた。



「もちろんさ。この工藤巧、とっくに準備万端だよ」

「…すみませんでした。僕も準備完了です」



巧に背中を張られる。



「おっしゃ。じゃ、行くか?」

「はい!」



二人は歩きだした。



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