岩内さん、フォーカス!
「あの二人、レベル高くねぇ?」



不意に耳に届いた声に、鼻が高くなる。



萌に釣り合ってるか、不安だったけど、大丈夫だったかな?

…いや。

一括りにされてるってことは、僕も女性に見えてるってことか…。



自分の身なりを確認。

下は細身のデニムパンツにスニーカー。上は空色のワイシャツに紺のベストをはおって、頭にはハットを被っている。



…一応、ファッション誌、読んだんだけどなぁ…。



「望。どうかした?」



萌は心配そうに見つめてくる。



「体調がよくないとか?」

「い、いや、ごめん。大丈夫だから…」



萌は眉尻を下げた。



「…もう、帰る?」

「え、なんで?」

「あんまり、楽しくないのかと思って」

「そんなこと、ないよ。ただ、ちょっと、僕が男らしくないのが、情けなくなっちゃっただけだから」



萌の手に、頬を挟まれる。



「大丈夫。望はちゃんと、私の彼氏」

「萌…」

「それに、他の誰が望のことを認めなくても、私は認めるよ」



萌の手が頬から手に移る。



「望はちゃんと、私の彼氏」



鼻の奥がつーんとして、軽く俯く。



「…ありがとう」



消え入る様な声で、精一杯、そう言った。



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