岩内さん、フォーカス!
同時に振り返る。

ライオンのたてがみの様な髪の、引き締まった長身の男性が、肩をいからせて歩いて来る。

男性は口を開いた。



「お前、萌だよな。ソイツ、誰だよ?」

「竜也…」

「応えろよ!」



萌の知り合い?

…下の名前で呼び合う様な?



「竜也。まずは、久しぶり」

「おう。で、コイツは?」





「私の彼氏だよ」





竜也は絶句した。



「…う、嘘だろ、オイ…」

「本当だよ」



竜也は乾いた笑い声をあげた。





「こんなヤツに、お前が任せられるかよ!」





竜也は拳を握り、こちらに振りかぶった。





殴られる!





身体が石になったかの様に動かなかった。





目を固く、閉じる。





しかし、いつまで経っても、竜也の拳は見舞われなかった。





恐る恐る目を開けると、竜也の拳は、顔面の寸前で、横から伸びた手に押さえられていた。





「やあ。危ないところだったな、小日向くん」





外村英雄が、そこにいた。




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