岩内さん、フォーカス!
「どいてください」

「今は、それは出来ない」

「なぜですか?」

「君を、犬死にさせるわけにはいかない」



好男を睨む。



「どいてくださらないのなら、力ずくで、押し通ります」

「それをさせないのが、僕の役目だ」





拳を振りかぶる。





好男の手が伸びて、拳に勢いがつく前に、押さえられる。





舌打ち。





足をしならせる。





好男の足が伸びて、押さえられる。





「小日向くん。頭を冷やせ。ちょっと、ビルの方を見てみろ」



視線を廃ビルに向ける。



武器こそ持っていなかったが、数十人の男がたむろしていた。



なんて数だ…。



「解ったかい。君一人では、岩内先輩のところにたどり着く前に袋叩きにされるだけだ」



くっ…。

僕には、やっぱり、なにも出来ないのか…?



「そう。君一人では、ね」

「え…?」



それって、どういう…。



「来たみたいだ」



好男はニヤリと笑った。




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