岩内さん、フォーカス!
小日向望は荒い息を吐き出した。

既に、肩と腹に、木刀の一撃を食らっている。



「さっきの威勢はどうしたぁ!」



竜也の一閃。

なんとか受け止め、鍔迫り合いになる。

腰を落とし、踏ん張る。



くっ…。

筋力と場数が違う…!



「ッラァ!」



竜也に払われる。

倒れかけ、踏ん張る。

萌が視界の隅に入る。



萌…。

必ず…。



「手前なんかに、萌を任せられるかよ。手前は萌を守れもしねぇ、萌の昔話でビビる、オマケに一人じゃこのザマだ!」



竜也の一閃。

後ろに跳び、避ける。





竜也は吼えた。





「ずっと萌をみてきた、ずっと萌を想ってきた。強くなりたかった。そして、萌に想いを告げた。もっと、強くなって帰って来た。もう、あんな弱い俺じゃねぇ。もう、萌を、俺のモノに出来るくらい、強くなったんだ、俺はぁ!」





歯を食い縛る。





「…萌は…、モノじゃねぇ…だろうが…」





言って、木刀を振りかぶる。





「あぁぁ!」




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