岩内さん、フォーカス!
萌の前に片膝をつく。



「萌…」



萌の頬を撫でる。



「う…ん…」

「無理して喋らなくていい。アイツを縛り上げて、下の奴らに、勝敗を教えてくる」



立ち上がるのを、愛歌に制される。



「小日向くんは、岩内さんといなさいな」

「でも、下は…」

「大丈夫よ。私も外村くんも、一発もらっただけだし。まだまだ、やれるわ」



それに、と、愛歌は続けた。



「そこに隠れてる、貴方の先輩も、まだピンピンしてるみたいだし」

「げっ」



物影から、巧が顔を出した。



「工藤先輩。ご無事でしたか!」



返事の代わりに、シャッターがきられる。



「ほとぼりが冷めたら、取材させてくれよ、望ちゃん!」



巧はそう言い残して、愛歌と、竜也を引きずる英雄と、階下に降りて行った。



溜め息。

萌の隣に座り込み、手をとる。



「…望…」



手が緩く握られる。



「萌…」



強く、握り返した。




< 196 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop