ふわり、ひらり
私は離れていく望月くんの手に少し寂しさを覚えながらも、何かを握らされた右手をゆっくりと開いてみた


「あ、これ...」


ピーチ味の可愛い飴

確かこれは、病院の売店で人気の飴だ

いつも私が売店に買いにいってもいつも売り切れのものだ

一回しか舐めたことがなくて、それを求めて毎日のように売店に通ったこともあった

その飴をどうして望月くんが?


「どう、元気になった?」


「..うん、ありがとう」


自然と頬が緩んで、そのままの気持ちを彼に伝える


「....うん」


望月くんは優しく笑って、そう言った


「...舐めても、いい?」


「どうぞ?」


私はその返事を確認して、飴の包みをくるりと剥がし、それを口に含んだ


「...美味しい!」


「そう、良かった」


甘さが口の中に広がるのを感じながら、私は幸せを噛み締めた


「...はい」


私が飴の1つを望月くんに差し出すと、彼は少し驚いた表情を見せて、


「ありがとう」


そう言って飴を受け取ってくれた


二人で舐めたその飴

望月くんが私にくれた飴


一人ぽつんと座って舐めたあのときよりも、

ずっとずっと、幸せな気持ちになった



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