緑茶カーテン
"前から気になってた"
その言葉を男子に言われてドキッとしない乙女が居るだろうか。
「そ、それは、どういう意味で……?」
期待したのも束の間、ハッとした目の前の茶髪メガネ君は
「違う違うっ!そういう意味じゃなくって……」
「柊先輩ったら……すみません、長谷川先輩!そういう意味じゃなくて……」
ここの学校の美術部員は「そういう意味じゃなくて」が口ぐせなのか。
と、言うか。
…………なんだか舞い上がった自分が恥ずかしい。
仕方ないじゃないか。乙女なら誰だってそうでしょ?
沙羅ちゃんの説明を聞くと
毎年恒例の「全国美術部コンクール」ってやつの、今年のテーマが"植物"らしくて。
でも植物の絵が得意じゃない空野君は
いつも中庭で植物をスケッチしてる私の絵を見て
いつ声をかけようか、と前から気になっていたらしい。
「緑さん、美術部じゃないのに絵が上手かったから驚いてしまって………アハ」
「そんな事ないよ!私なんてまだまだだし」
「そういえば私まだ、長谷川先輩の絵、見たこと無いです」
ただでさえ可愛い沙羅ちゃんに、スゲー甘い潤目で「見せてくれませんか?」と頼まれてしまったら
見せないわけにはいかなかった。