kiss


あの時は混乱してて、気付かなかった。


じゃあ、あたしにキスしたのは、一体誰……?

全く知らない人だとしたら、少し怖くなってしまった……。


「あ……そっか。功の考えが読めた」

「え……?」

「嘘……ってより、うまくごまかしたのね。言葉を現実にするために、自分からもキスした。ベッドでキスされたのを功が否定したら、アンタがこんな顔するってわかってたから」

「こんな顔……?」

「アンタ今、ヒドい顔してるよ……」


……確かに、あの時は怒ったけど、今は……怖い、不安、ショックが大きい……。


「言わない方が、アンタの為だったのかもしれないね。ごめん」

「ううん……それが、事実だから、しかたないよ。大丈夫」


振り出しに、戻った……。

それどころか、無罪なはずだった功まで巻き込んで、むしろあたしを想ってくれていた。


『もう俺ら、友達やめよう』


どんな気持ちで、それを言ったんだろう……。
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