kiss


子供の頃に入った時と変わらない部屋。

なつかしい……シンプルな部屋。


「そこ、座って」


小さいテーブルがあって、その横に座布団があって、そこに座った。


あまり変わっていないように見えた部屋だけど、よくよく見てみると、小物とかが少し違ってるし、飾る物の趣味も変わった。

記憶が、子供の頃のまま取り残されていたみたい……。


「雪那」

「……」

「雪那だ……」


安心したような、声。

切ない声……。


どうして、そんな声を出すの?

まるで、母親に置いて行かれた子供みたいに……。


秋継がわからない。


怒っていて、泣きそうで……それなのに、うつむきがちな口元は少し笑ってる。

たくさんの感情が、一つにあつまってるみたい……。
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