一番星


あたしが声かけるとパッとこっちを向いた。





「帰る?」

「…うん」


先読みか。


「傘入る?」

「うん」

「じゃ、帰ろっか」



半ば、分かりきったかのような彼の反応だったけど、まあいいや。


それより、どこか、彼の雰囲気がいつもより柔らかいのは気のせいだろうか。





教室を出て、2人で暗い廊下を歩く。


………たまにピカッとするのが否応なく分かる。


ビクッとするのも教室の三倍増し。


前を歩く彼にバレていないといいな。

なんとなく思う。




不意に、ケータイを探そうと、鞄を探った。

と、その時、あることを思い出した。



「ねえ、」

「ん?雷こわい?」

「今日私自転車で来た。」



丁度、下駄箱の前だった。






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