歪んだ目 短編
手を動かす。



見えない。



足を振り上げる。



見えない。



なんにも、見えない。



…当たり前だけど。



それだけが…。



私はただ、四肢を動かし続けた。



…救急車のサイレンが近づいてきた。



──ああ、死ぬんだ…



階段から落ちただけで、死ぬわけないのに。



なのに、そんな風に思った。



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