『金持ち心♀♂貧乏心』
美桜は、しまったという様な顔で、相手の正面に立った。
「何度も言うようですが、私には」
「顔を見て、言えないんですか?」
美桜は泣きたくなった。
ずっと大人の人なんだ・・・と心で思い、顔を上げた。
「ですから、私には・・・・」
「忘れられない人ね・・・・。それって誰?」
ワイングラスを片手に、人をあざ笑うかのように笑っている男。
ストライプのスーツをビシッと決めて、髪もワックスなんかでカッコよくして貰っていて、もう私の知っている人では無い。
「あたし・・・間違えたかも・・・」
「間違えて無いですよ?大道寺美桜さん」
たった数年でこんなにも変わってしまうのだろうか。
美桜はそう考えるが、自分は変わったので、なんとも言えない。
「自己紹介まだでした。東野櫂也です」