『金持ち心♀♂貧乏心』
「ねぇ、西園寺の人間なら、ここ、買い占めちゃえばいいじゃない」
美桜の発言に櫂也は足を止め、美桜を見た。
「俺は、ここの人が頑張って作った店を、自分の物にしようとかは思えない。パートっていう800円とかで、家族のために働いてる人だっている。生活を簡単には奪ってはいけないんだ」
「よく、分からない。昔はそういうの知ってて、関心してたはずなのに」
美桜の言葉に櫂也はかなり驚いた。
莱華が言っていたように、昔は彼女にも庶民の心があったんだと・・・。
「買出しなんて、パシリかと思ってたけど、自分の買い物と対して変わらないのね。たった短時間なのに、こんなに心を掴まれるなんて、庶民の店は凄いわね。それともそうでもしなきゃ、やっていけないのかしら?」
櫂也は心の中で呟いた。『それは、おまえの中でまだ、失ったはずのモノがあるからだ・・・』と。