『金持ち心♀♂貧乏心』
40代後半~50代前半だと思われる男は、優しそうな笑みで「大丈夫か」と一言。
大丈夫じゃない。というのが本音だったが、ここはとりあえず、大丈夫です。と男に告げた。
男は満足そうに微笑むと「強いんだね、君は。・・・気に入ったよ」と俺に言う。
俺は一瞬、自分の臓器が気に入ったのかと思った。
すると俺の不安気な表情を読み取ったのか「少し話をしないか?」と男は言う。俺は路上に倒れたまま、痛い首を動かすと、車からスーツを着た黒眼鏡の若い男が降りてきて、俺の体をゆっくりと起こした。
「彼を乗せてくれ」
「かしこまりました」
只者では無いと思ったのは、この会話を聞いたとき。
俺の体を支えながら、黒眼鏡の男は、血だらけの俺をリムジンの中に押し込むような形で乗り込ませた。