『金持ち心♀♂貧乏心』




「今日の運転手が西川じゃなくて、良かったよ。」と男は豪快に笑った。



黒眼鏡の男もまんざらでもない表情で運転していた。




「あの、お名前は?」



口の中が切れてヒリヒリする中、俺はこの男に聞いた。




「西園寺大吾郎という。よろしくな」



手を出され、俺も素直に手を出す。


力強く握られた手。




自分も自己紹介しなきゃと思い、口の中で唾と混ざった血を飲み、口を開けた。



「俺は、東野櫂也です」



「櫂也くんか・・・いい名前だ。家族はいるか?」




「はぁ・・・?妹が一人。羽美って言います。羽に美しいでウミ。家族は自殺しました」







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