Color



「で、なんだっけ?」

食べ終わったお弁当箱の蓋を閉めながら、そう聞く彰吾に、


「ううん、なんでもないよ」

わたしは笑って返事をする。


なんでもない、なんてそんなのは嘘で。

今日、彰吾が放課後あいていたなら、一緒に過ごしたいなって思っていた。

多分。多分だけど、彰吾がわたしの話をちゃんと聞いてくれる人だったらきっと、放課後は一緒に過ごしたいなんて、そんな恥ずかしい誘いがわたしから言える人じゃなかったと思う。

彰吾が聞いてないってわかってるから、わたしは言葉に出来るってだけ。

聞いてなきゃ意味ないけど、聞いてないからこそわたしから、「放課後あいてる?」なんてことが言える。

好きだよって言葉に出来ない替わりに、こうして一緒居たいアピール。

聞いてるかもって、少ない可能性でわたしはいつも言葉勝負をする。





< 111 / 309 >

この作品をシェア

pagetop