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ひとりで傘立てに腰を下ろしてる彰吾。

辺りを見回したけどまわりには誰もいなくて…寧ろ、わたしと彰吾以外に生徒は今、この校舎自体に誰一人居ない気がする。


お互いに何も言わないから、妙な空気が漂った。


「…………」

正直、今は会いたくなかった。

こうやって気まずくなるって分かってたし、何より彰吾に泣き顔を…見せてしまったから。

彰吾が松野さんを好きだって知った時から、決めていた。

何があっても、この人の前で泣いてはいけない。

と、わたしはそう決めていた。

もう会ってしまったから、今更どうしようと遅いのだけれど。


彰吾は何も言わず立ち上がり、玄関を出た。


何してたんだろう、と後ろ姿を見ていると彼はゆっくりとこちらに振り返り、


「帰ろう」

そう言葉にした。






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