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最初は、彰吾に「昨日はどうした?」って聞かれるのかと思ってた。
でも、今の様子だとそんな問い掛けはきっとないだろうとわたしは当たり前にしていた。
いただきます、と挨拶をして箸を持ったもののあまりお腹が空いていない。
得に理由はなくて、自分でも不思議に思った。
それでも…、わたしはいつもと同じように箸を進めた。
食べることに集中していないと、この空間はやっぱり虚しくなってしまうから。
チラッと横を見ると、彰吾は普通に食べていた。
「玉子…」
ボソッと呟いたその声に、わたしは気が付かなかった。
だから、
「なぁ、なんでこっちの弁当には玉子焼き入ってないの?」
突然そう喋りだした彰吾に、わたしはびっくりした。
「………な、何?」
「玉子焼き、俺の入ってない」
「…………え?」