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「貰う」
わたしのお弁当から、許可なく玉子焼きを貰っていった彰吾。
普通の顔をして、彰吾は食べていた。
………美味しくないのに。
焦げた玉子焼きを食べる彰吾が、なんだか馬鹿に見えて鼻でフッと笑いたくなった。
一体、何のつもりだろう。
読めない、彰吾の気持ちが。
いつだってそう。
松野さんを想ってることだけは、十分わかるのに。
他のことはまったく。
本当は、ずっと前から気付いていた。
でも、気付いていないフリをしていた。
それは、彰吾のためだと言い聞かせておいて、自分の為。
人を置き前に、自分は違うと目を閉じていた。