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「莉鈴、泣きすぎ」

ちょっと困った顔で、微笑む春はとても大人びていた。

「靴投げでもするか?」

ははっと、笑う春に、あたしは「やんないよぉ」とグズグズしながら言った。


包まれる春の温もりに、どうしようもなく幸せな気持ちになる。

10年越しの恋が、やっと叶ったんだ…。


「ずっと一緒にいよう」

そう耳元で囁かれた声に、精一杯頷いた。

小さくて、細い小指ではなく、重なる唇に、再び約束を―――…。


初めてのキスは、とても優しく、温かい、幸せなキスでした…。





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