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ぽつりぽつりと、ゆっくり自分の言葉で伝えていく。

『辞書を片付けるあたしに、手伝うよって言ってくれたその言葉が始まりだったんです』

そこまで言って、ようやく自分のことだと気付いた先輩は驚いた顔をした。

『お礼を言いそびれた失礼なあたしに、困った事があったらってまた優しさをくれて…本当に嬉しかったです』

誰もいない廊下に響くあたしの声は、ほんの少しだけ…震えてる。

『麻美と先輩が付き合った時、本当は泣きました。どうしたら良いのかわからなくて、たくさん悩みました』

その時の心境を聞いて、先輩がどう感じたのか分からないけど、困った顔をした。





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