Dearest
「じゃぁ後でね!」
「うんばいばーい」
紀代と別れて廊下の角を曲がったら、見慣れた後姿に笑みが零れた。
「せんぱ・・・」
駆け寄ろうとした足が止まって、思わず息をのんだ。
ちらっと見えた先輩の横顔は、今にも泣き出しそうな顔だった。
理由は考えなくてもすぐにわかった。
視線の先・・・
「綾瀬先輩・・・」
綾瀬先輩は同じ部活で、あたしたち後輩にすごく優しい人だ。
可愛いより綺麗に入るほうで、頭もいいのに面白くて、好きな先輩だった。
だけど今この状況で、あたしは紛れもなく綾瀬先輩に嫌悪感を抱いていた。
先輩は先輩であたしに気づくことなんかなくて、ただただ綾瀬先輩を見つめていた。
ただただ・・・愛おしそうに・・・