秘密な結婚


それから家に戻って

玄関のドアを閉めた瞬間に

紗和の唇を奪う様に塞いだ。


紗和が、俺以外の何も見えなくなる様に……。


彼女が他人に言えないこの関係を

不安に思っている事は知ってる。

祐希奈の存在に怯えている事も。


だけどそれ以上に、きっと怖いのは

俺の方だ。


もう疲れたから自由にしてほしいと

もしも紗和に言われたら

引き留める事は出来ないのだから。


もし俺がパシフィールの跡取りじゃなくて

婚約もしてなくて

普通の男だったら

彼女の不安なんて存在しないのだから。




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