秘密な結婚

「行こうか」


彼に背中を押されて、震える足取りで

何とか前に進む。


『春木』と書かれた石製の

電話帳ほどの大きさの

表札の下の

インタホンを彼は何の躊躇いもなく

押した。


『はい、どちら様でございますか』


スピーカーから女性の声がする。


「拓真だけど。

じいさんに呼ばれたんだ」




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