近くて遠い距離





そんな事を考えながら古泉の歌声を耳に入れる。



相変わらず、歌は上手だった。



そこで思い出すのはきまって古泉とよくカラオケに行った事。



98点を古泉が出して、私がその次に歌った歌で99点を出して喧嘩したりもしたっけ。




あれから一年か。


早いな。




目を細める。


こうやって、すぐに時間は過ぎていっちゃうのかなぁ。




そう思うと何だか寂しくなった。





「はい、89点ー。」



「聖、そんなに大きな声で言うなよ。」



「だって、90点いってねぇんだもん。」



「あと1点で90点だろうが。」



「あと1点で90点でも80点代なのに代わりはねぇよ。」




聖が古泉を見てニヤニヤと笑う。




聖、結構あんた黒いのね。




へぇ~。と聖を見ていたら



「田中さん…は歌わないの?」



少しつり目な瞳を私に向けた。





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