近くて遠い距離





「…で、何?」



「何処で覚えたんだよ。その、さりげない防御は。」




フウッ、と呆れた様子で私を見てくる古泉に


お前から学んだんだよ。


と鋭く睨む。




「まぁぃぃや。つぅーかさ、俺ももう帰らなくちゃいけねぇんだよ。


だからさ、田中さんも一緒に帰ろう。」




急に真剣な顔をして私を見つめてくる古泉。



え、急にどうした?




「はぁ?どうしたの、古泉。真剣な雰囲気出しちゃって。」




珍しく真剣な古泉がおかしくてフフッと笑うと


マジで真剣なんだって。


といつものツッコミが無いまま古泉は焦った表情で言った。



それが私に妙な緊張感を与えて、私も緩めていた顔の筋肉を引き締めた。




「…どうしたの?」



「アイツ…聖さ、手ぇ早ぇんだよ。だから田中さんとは二人で居させるのは不安だ。」




眉を下げて私を見つめてくる古泉。



その真剣な目に体が震えた。



………私が古泉の事を好きな時に、それを言って欲しかったな。




< 41 / 67 >

この作品をシェア

pagetop