近くて遠い距離
「…で、何?」
「何処で覚えたんだよ。その、さりげない防御は。」
フウッ、と呆れた様子で私を見てくる古泉に
お前から学んだんだよ。
と鋭く睨む。
「まぁぃぃや。つぅーかさ、俺ももう帰らなくちゃいけねぇんだよ。
だからさ、田中さんも一緒に帰ろう。」
急に真剣な顔をして私を見つめてくる古泉。
え、急にどうした?
「はぁ?どうしたの、古泉。真剣な雰囲気出しちゃって。」
珍しく真剣な古泉がおかしくてフフッと笑うと
マジで真剣なんだって。
といつものツッコミが無いまま古泉は焦った表情で言った。
それが私に妙な緊張感を与えて、私も緩めていた顔の筋肉を引き締めた。
「…どうしたの?」
「アイツ…聖さ、手ぇ早ぇんだよ。だから田中さんとは二人で居させるのは不安だ。」
眉を下げて私を見つめてくる古泉。
その真剣な目に体が震えた。
………私が古泉の事を好きな時に、それを言って欲しかったな。