近くて遠い距離
「そっか。じゃあ帰ろうか。」
「はぁ…、良かった。田中さんに手ぇ出されたら俺マジで困る。田中さんは俺のだから。」
「ふざけないでくれる?自意識。」
サラッとお前は俺のもの発言をした古泉の首を片手で締め上げる。
お前をぃぃ奴になった、と少しでも思った私が馬鹿だった。
「ちょっ、首は反則「黙れ、万年発情期男。」」
古泉の首から手を離し、鞄に出していた自分の物を詰める。
すると、それを今まで黙って見ていた聖が私の腕を掴んできた。
ドキリ、胸が大きく跳ねた。
「…何?」
「帰るの?」
「うん。もう門限あるから。」
「…もう少しここに居て?」
魔性。
脳裏にそんな言葉がポンッと浮かんだ。
潤んだ瞳、下がった眉毛、掴まれた腕から伝わる熱。
帰る、と決めていたのに私の決心は一瞬の内に崩れ落ちた。