近くて遠い距離
「す、少しだけなら…。」
「田中さん!」
私がOKを出したと同時に古泉が私の名前を叫ぶように呼んだ。
ダメ、私はもう捕まった。この人から逃げられない。
「ごめん、古泉。少しだけここに居たら帰るから。
門限あるんでしょ、間に合わなくなるよ…。」
「聖、手ぇ出すなよ。」
「古泉が決める事じゃねぇだろー。」
私を挟んで繰り広げられる会話。
それは、端から見たら好きな子の取り合いに見えるけど私が思うにこれは――…
セフレ、の取り合い。
「ぜってぇ手ぇ出すなよ!」
古泉は門限ギリギリまで聖と言い合いをして、門限ギリギリ間に合うぐらいの時間に帰っていった。
出ていく時、古泉が心配そうな目を私に向けて。
…そういう目は私じゃなくて好きな人に向けるべきでしょ。