近くて遠い距離
『ねぇ、駄目?』
一向に返事をしない私に聖が甘く、ねだるように囁く。
まるで、悪魔の囁きのように。
「駄目じゃない事もない。」
『どっち。まぁ、俺は抵抗されてもするけどね。』
そんな酷い攻撃をしてくる聖にせめてもの抵抗。
どっちとか言いながらキスをする、と言い切った聖に
じゃあ最初から聞くなよ。
と言いたくなった。
「…盛んな。」
『何で?だって田中さん、上手なんだもん。俺も気持ちいい。キスも。勿論、キス以上も。』
そんな台詞をフフッと普通に笑って言わないでくれる、なんて事は思っても言えない。
さっきからその艶やかな色気たっぷりの声に息が詰まって死にそうだ。
それなのに、この男ときたら。
『ねぇ、田中さん。』
「何よ。」
『キスして?って言って。』
私を相当、殺したいらしい。