近くて遠い距離
一緒に、花火を。
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「田中さん。来週の日曜日の花火大会、少し逢える?」
夏休みに入って六日が経ったある日。
私は、またあの公園に聖と一緒に居た。
「花火大会は友達と一緒に行くから…。」
「少しだけでぃぃんだ。……友達と一緒に行ってもぃぃんだけどさ、少しの間だけ抜けてこれない?」
聖が私の太ももにさりげなく手を置き、私の顔を覗くように見てくる。
それは、聖が私に"お願い"する時に必ずやるポーズ。
どうせ色んな女の子にやってると思うけど―――
「少しだけなら…。」
「ありがと。」
聖を好きになってしまった私には、断る事なんて出来ない。
それを聖だって、絶対に分かってやってるんだ。
「………ずるい人…。」
「ん?」
「…何でもない。」
首を傾げる聖に、眉を下げる。
……それを分かっていながら首を横に振る事が出来ない私は、どうしようもなく馬鹿だ。