ベルゼビュート(仮)
神殿の中は、外観より朽ちてはいなかったが、蜘蛛の巣や虫、トカゲなどがいた。
中に入ると、外とは明らかに空気が変わったのが分かる。
ビリビリと電気が身体中を覆っているように痛い。
しかし、セイラはそれを感じないようで、スタスタと奥へ進んでいく。
刺すような、気を抜くと押し潰されるような空気に、マコトは体力も気力も奪われる。
こんな事ではセイラを守れないと、マコトは焦る。
「マコト、大丈夫?」
様子のおかしいマコトに、セイラが心配そうに声をかける。
「あぁ」
マコトは何もないように振る舞う。
奥へ進むも、モンスターはあまり出てこなかった。
襲ってきたモンスターも、セイラの体術で全て倒した。
一番奥の部屋の前に着くが、扉が開かない。
それまでも何個も扉があり、そこは開いていたり軽く押せば開いた。
「どうしようか」
「戻ろう」
ここを開けては駄目だと、全身が訴える。
セイラは一際それを感じるらしく、必ず止めるだろうマコトに意見を求めたのだ。
「そうだね」
今度は、セイラも従う。
戻ろうと後ろを振り向くと、今までとは比べ物にならないほど大きなモンスターが現れた。
前をそのモンスターに塞がれ、後ろは開かない扉。
逃げ場がなくなった。
「くそっ」
やはり、あのとき止めていればと、マコトは後悔する。
武器を持っていない自分は、セイラの足手まといにしかならない。
もしもの時は、自分の身を犠牲にして守ろうとは思っていたが。
「ギョギャーー!!」
モンスターが一声鳴いた。
植物系のモンスターのようで、無数のつるが伸びている。
炎系の魔法が使えれば、苦もなく倒せる相手だが、セイラが使えるのは回復系の魔法で、マコトは魔法を使えなかった。
モンスターの攻撃を避けながら、どうするか考える。
火をつけられる道具でもあれば、モンスターを怯ませて逃げることも出来たかもしれないが、二人とも持っていなかった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
とうとうマコトはつるに当たり吹き飛ばされ、壁に激突する。
セイラはつるに捕まり、身動きが取れない。