ベルゼビュート(仮)
《では、私をお前の体に入れろ》
「な、に?」
《さすれば、私の力を使い、神子を救えるぞ》
その言葉で、マコトの迷いは無くなった。
「わかった」
《では、私の名を呼び、『契約する』と言え》
マコトは、意を決して言葉をつむぐ。
魔神を自分の体に入れることになっても、そのせいで、世界を敵に回すとしても、セイラを守れるなら……。
「俺は、……俺は、魔神ベルゼビュートと契約する」
《了解した》
その声と共に、開かなかった扉が開く。
奥の柩が開き、その中から闇のように黒い煙が現れる。
突然の出来事に、モンスターの動きも止まり、セイラを放す。
「イタッ! 何?」
つるから逃れられたセイラは尻餅をつく。
そのままの格好で、その黒い煙を見る。
「龍?」
黒い煙は龍の形となり、マコトの周りを取り巻く。
「マコト?」
「……ごめん、セイラ」
マコトが言うと同時に、龍の形の黒い煙は、マコトの体の中に入っていった。
黒い煙がなくなると、マコトの腹部の傷口が塞がり、今まで感じていた痛い空気もなくなった。
立ち上がったマコトが目を開くと、そこには、あの漆黒の瞳はなく、深紅の瞳が現れた。
「《やはり、若い体は良い》」