君に逢いたかった理由。

「あんた…何者?」

ミルクを半分くらい飲んだころに聞いてみた。

『んー…人?』

「そうゆうことじゃなくて!名前とか職業とか!」

『なに?俺のこと知りたいの?』

「はぁ!?もういい…話になんない」

『そう怒んなよ』


そう優しく言って、
コイツは話はじめた。


『俺の名前は、ジン。尋ねるって書いて尋。此処に一人で住んでる。』

「…それだけ?」

『他は…秘密。次は君の番だよ?』

「…私には、名前なんてない。家もない。…なんにもないの」


唇をキツくキツく噛み締める。
昔からの癖。
嫌な事や、悲しい事があるとよくやる。

たまに強く噛み過ぎて血が出たこともある。


『それ、止めたら?唇傷つくよ?』

「なんで、そんなに優しくすんの?やめてよ。うわべだけの優しさなんて!」


どーせコイツも私を捨てる。


…そう思ったのに。



『君に名前をあげる』

またコイツは、
不思議なことを言って優しく笑うんだ。


alon
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