この壁の向こう側【BL】
どうすればいいのか解らない僕は、
とりあえず、やっぱり、
この壁をすり抜ける術を必死に探す。
誰かが囁く。
窓を、乗り越えればいい。
窓枠に手をかけて、体を浮かす。
すると彼は身を引いて、
そして僕は壁をすり抜けずに、
ようやく室内に入る事が出来た。
「いつもそうやって、
本当に、適当過ぎる……」
彼は小さく微笑みながら、そう呟いた。
いつも。
ふいに僕の頭にもよぎるそれ。
きっと、僕じゃなくて誰かのいつもだ。
そのいつもを彼が望むのなら。
それなら僕は、誰かでいたいと思う。
いつかどこかの
壁の向こう側へ行ける時まで。