この壁の向こう側【BL】


唇が離れると、
彼は再び、その瞳に涙を浮かべる。


たくさん、ポロポロと零れてくる水滴。


今こそ、壁がすり抜けられればいいのに。

そうしたら、彼を抱きしめに行けるのに。

いますぐに。


「ごめんね」

もう一度、謝って口づける。


なのに益々、涙は溢れるばかり。



「許してくれる?」

そう尋ねると、彼は首を横に振った。


許してくれないのだろうか。



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