この壁の向こう側【BL】


「違う、もう怒ってないから」

そう言う彼の瞳は、
けれど、やっぱり濡れている。


僕は彼の目元に唇を這わせ、
少しだけしょっぱい味の
その涙を拭い取っていく。

だけど彼の手に拒まれて、
そうしてから彼は言った。


「嬉しいんだよ」

そう言いながら、やっぱり泣く。


「じゃあ、何で泣くの?」

「嬉し泣き」

短く答えて、ちょっと笑う。


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