【短編】俺とアイツ
「――――祐介、キライ」
アイツの口癖は、どうやら朝から健在のようだ。
荒い呼吸を繰り返しながらも笑っているアイツに、俺も笑ってみせる。
「…俺もだ」
いつものやり取り。
なのになぜか胸が軋む思いがした。
…くそ。
俺らしくもねぇ。
心の中で舌打ちをし、表情が出てしまう前に俺はアイツの上から降りた。
「祐介?」
不思議がるアイツの声に背を向け、目を閉じた。
布が擦れる音がして、アイツの体温がすぐ傍に感じられた。
「ねぇ、祐介」
「んだよ」
「キライ」
「……知ってる、俺もだ」
その返答にアイツは小さく笑い、俺の背中に体を擦り寄せた。