【短編】俺とアイツ
「祐介、キライ」
「俺も」
「キライ」
「俺も」
「キライ」
「……」
何なんだよ、コイツ。
キライとはよく言われるけど、こんなに連呼されたことなんてなかった。
戸惑いながらも、「俺も」と返す。
するとアイツは笑いながら言った。
「祐介って、“キライ”って返したことないね」
「は?」
歌うようにそう言ったアイツは、また何もなかったように俺の背中に触れる。
キライって返したことない、だと?
そんなの当たり前だ。
俺はキライなんかじゃねぇんだから。
むしろ好きだってのに。