好きと言えない。―悪魔と恋―【完】
夕方、仕事が終わった私は歩斗の腕を引っ張った。
「何だ」
「今日、お泊まりありですか?」
「残業だ」
「えー…」
…そんなぁ…。
残業なんて寂しいよ。
でも、シツコイのも嫌われちゃうし。
「わかった。今日は大人しく帰るよ」
「ん。また明日にでも来いよ」
全員に「お疲れ様でした」と声を掛け、一足先に退社する。
真っ直ぐ家に帰るのも気が引けて、専門時代の友人である夏川枝玲奈ーナツカワエレナーに電話をし、ご飯に行く約束をこぎ着けた。
「じゃあ、後でね」
電話を切り、約束したレストランへと向かった。