好きと言えない。―悪魔と恋―【完】
落ち込む私と、焦る母親は、支払いを済ませると、産婦人科に向かった。

地元では名も知れていて、信頼の熱い所。

招待状を出し、震える手で問診票をまた書く。



「赤ちゃん…これからどこに行くんだろ…」



バラバラになったパパとママを、見守ってくれるのかな。

この事。

歩斗に伝えるべきなのだろうか。

それとも言わずに、両親と私だけで、水子供養を済ませようか。



「葛西さーん。中へどうぞ」



先の事を考えながら、私は診察室に入った。

スエットの下と下着を脱ぎ、分娩台に上がると、体が震えた。

隣に、歩斗が居て欲しかった。
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