好きと言えない。―悪魔と恋―【完】
悪魔と喧嘩
歩斗の出張が終わった日。
私は帰り道に呼び出された。
会える嬉しさと、怒られそうで不安な気持ちが入り交じる。
速足になっては止まって。
速足になっては止まっての繰り返し。
マンションに着き、“805”と、歩斗のインターフォンを鳴らす。
ーーウィーン
無言で開けられた、マンションの入り口。
エレベーターに乗ると、不安しかなくなっていた。
ドアノブに触れれば、鍵が開いてる。
「お邪魔、します…」
リビングに行きながら言うと、歩斗がキッチンから缶ビール片手に出て来た。
「ある…」
「どうするんだ?お前。今回は忘れ物あるけど」
スーツやパジャマ。
下着だっておいてある。
けど、“忘れ物”って?