正しい恋の進め方



そんな今井くんと接点を持つようになったきっかけは、学校の大掃除だった。



クリーン作戦なんて名前がついているが、要は早めの大掃除だ。



どうせまた学期末に二回目の大掃除するわけですが。


そんなクリーン作戦で、今井くんと同じ班になってしまったのが、全部の始まりだった。


友達は今井くんと一緒だ、智奈、どうしよう!と言っている。いやあたしに聞かれても。多分どうもしないでいいんじゃないかな。




しかしここはアホしか集まってこない偏差値の低い高校だ。


生徒たちは大掃除なんてするわけもなく、お喋りしたり雑巾と箒で野球したり。うちらの班も、同様に野球をしてた。


もちろん私も。



そんな中今井くんと年寄りの先生だけがバカみたいに真面目に掃除をしてて。



明らかに掃除なんてしなそうな彼がこんなにまじめにやっていることが、何故か無性に目障りだった。


多分私がおそろしく子供だったからなんだろう。



彼が、バカなお前たちとは違う、と言っているような気がして。



なんか自分と彼とに大きな差があるんだと言われている気がして。



それが気にくわなかった。


私だってやればできる



あんたと一緒の高校2年生だ。



ヤクザと関わりがあるからって調子にのんなよ



こんな小学生のような事を考えている時点で完全に負けだ。

もちろんこの時の私は気づいていない。




私は野球をやめ、今井くんの方へつかつかと歩みよると、




「ここ箒で掃くから。どいて」



ぶっきらぼうにただそれだけを言った。


そして彼に背をむけ、持っていた箒で床を掃きはじめる。



と、




「………ふっ、」





彼が笑った。










鼻で。


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