ナツの夏
今度は、家の裏から麦わら帽子をかぶったおばさんが飛び出してきた。きっとお母さんだ。
みんな、先生が帰ってくるのを待っていたんだ。
「先生、人気者ですね」
「今日だけだよ」
そう言って先生は、麦わら帽子のおばさんに駆け寄り「お母さんただいま」と笑った。
すごく素敵な光景で、私はまるで美しい絵を見るようにそれを眺めていた。
すると先生のお母さんが私に気付き、「なっちゃんもお帰り」と言ってくれた。
「なっちゃん」にも「お帰り」にも、私は慣れていない。
妙に恥ずかしくなって「お邪魔します」とか細い声で応えた。