ナツの夏
プシュッと音を立てて、また缶ビールの蓋があく。
先生はコップに注がず、そのまま勢いよく口に入れた。
「前々から親戚のおばちゃんに言われてたんだよ、いい人がいるってね。そろそろ腹くくらないとさぁ」
「もしかして、それで帰省したんですか?」
「まあ、それもある」
先生らしくない曖昧な返事に、私は苛立った。
「先生がお見合いなんて、似合いませんよ。男子のネタにされておしまいです」
「アハハ!確かにそうかもね。でも、相手は私のことすごく気に入ってくれてるんだぞ」
写真だけ見ればね、と思ったが私は何も言わなかった。
私がとやかく言う筋合いはないのだ。
でも、なんか嫌だ。
皐月と付き合うのも違うと思ったけど、お見合いなんて、もっと違う。
とにかく、先生には似合わないのに。